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Reading Saras Sarasvathy's Effectuation

 


※本記事はブラウザの翻訳機能を使用せずにお読みください。

私は、不確実な環境での意思決定という視点から本書を読み進めました。経営者として逃れられない「意思決定」の役割への興味は、時間が経てども変わりません。

間主観性の重要性:

”すぐに行動を起こし、「他の人と相互作用しようとする」”
”関与者は自発的にそのベンチャーにコミットし、プロセスに参画する。”
”コミットメントの一つは、新しい手段と目的をもたらす”
”起業家的機会は、発見ではなく、行為の結果である。”

本書を読む中で、私を最も引きつけたのは、「間主観性」という概念の探求です。個人的「主観」や、「客観」的な市場や環境を超越し、最初の顧客やパートナーと共に新たな市場や機会を創出するというプロセスに焦点を当てている点が特にそうです。

さらに、予測に頼るのではなくデザインを重視するという経済学の内容も、この間主観性の考え方を中心に据えています。

この間主観性というのは、私が実際の業務で直面し、そしてしばしば知識を欠いていたと感じる部分です。それは具体的には、「人と人との間」や「心と心の間」といった相互作用の場で、人々の間に生じる「情動伝染」のダイナミックな現象を指します。この概念を理解し、適用することは、私の専門分野における重要な発展でした。 

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調査への疑念:

本書の基礎となる調査はインターネットのない時代のもので、対象者は、1918年から1953年に生まれで41歳から81歳、少なくとも一つの企業を設立し、創業者・起業家としてフルタイムで10年以上働き、最低でも1社を株式公開した経験を持つ人々でした。

調査対象となった起業家のうち63%がエフェクチュエーションを好む傾向にあると指摘されています。
逆に言えば4割の人がコーゼーション的アプローチで成功する可能性があると解釈することもできるでしょう。

また、エフェクチュエーションを用いた人々の総数や、その中での失敗の割合は不明です。もしもエフェクチュエーションを用いて挑戦した100人中90人が失敗し、コーゼーションを用いた4人全員が成功していたとしたら、どのような意味を持つのでしょうか。

また、「熟達した起業家」の「共通点」に焦点を当てており、起業家以外の人々との比較は行われていません。ひょっとすると、新入社員のような起業家でない人々が、起業家以上にエフェクチュエーション的なアプローチを取り入れているのかもしれません。

例えば、入社後間もない期間に、分からない状況の中で「より良い仕事」を目指して、自己の知識やスキルの不足を補う頼りがいのある同僚を見つけ、現時点で理解できる範囲で行動を起こし、他者との相互作用や関与者のコミットメントを通じて仕事の手法や目標を改善していく過程は、まさにエフェクチュエーションを体現しています。

著者は、”knightの不確実性(測定不能なリスク)では一般的な論理であり、人間の行為によって導かれる分野で利用される可能性がある。”と本書の中ではっきりと言っています。つまり、そのような状況なら我々の誰もがエフェクチュエーションを利用する可能性があります。

予測と適応のスペクトラム:

本書に対する私の期待は、起業家特有の特徴、つまり他の多くの人には見られない独特な傾向でした。しかし、本書の趣旨は、どちらかというと、起業家の特徴の探求を発端とした、既存の実証経済学(正確な予測を目的として努力される自然科学のような客観主義的科学研究)への対立軸の探究です。

一方の極を既存のマーケットイン(実証経済学的、目的と計画と資源配分)的なコーゼーションとし、もう一方をリソースベースドビュー的エフェクチュエーション(手段と行為の相互作用)としたスペクトラム上で、対立軸を提示しています。

これは、経験的に理解されている大きな対立軸を、理論的な枠組みで整理しようとする試みであり、コトラーとバーニー、艦隊とゲリラ、予測型と適応型、啓蒙主義とプラグマティズム、演繹と帰納など、我々が既に耳にしているコンセプトに基づいています。

デザインの経済学:

本書におけるデザインの経済学への展望は、既存の実証経済学の枠組みを超えたものです。実証経済学が目指すのは、自然科学に倣った客観性を以て正確な予測を立てることであり、その過程で確立された方針に基づく行動を規定します。一方で、エフェクチュエーションに基づく経済学は、予測可能性よりも創造性に焦点を当て、「新しい世界をデザインする」という目的を持っています。ウィリアムジェームズのプラグマティズムに影響を受けているような引用がありました。西田幾多郎の純粋経験とも近いかもしれません。

  • 外部環境への働きかけ: ただ環境に適応するのではなく、積極的に環境自体を形作り変えていくこと。
  • 関与者との相互作用: 関与者との深い相互作用と、そのプロセスへの共同のコミットメントを重視すること。
  • 発展の追求: 未来予測に立脚した計画ではなく、組織や環境の持続的な発展を追求すること。
  • 相互作用を通じた判断:継続的な対話や間主観的な相互作用を通じて、多様な価値観や視点を統合し、判断の基盤とすること。
  • 市場より組織: 市場経済の枠を超え、組織内の経済活動としての相互作用の連鎖に着目すること。

私自身のプロジェクトデザインにおいても、この「デザインする」という価値観は共鳴します。予測に基づく計画よりも、現場での経験と直観を重視し、形づくりながら進む柔軟なアプローチを取ることで、常に新しい可能性を見出しています。
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5つの原則:

本書において紹介されたエフェクチュエーションの5つの原則は、私が実際に口にしてきた概念と類似します。「あるもの(リソースベース)で、身近なところから、お金をかけずに、できることを組み立てて行く。大きい方針だけ決めて、やりながら修正していくやり方」です。

本書はまた、「レシピ通りに作るのではなく、手元にある材料で料理をする」という比喩を用いていますが、私はこれを「創業期のリーダーシップは家政婦さんのようなスキル」と例えてきました。

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留意点:限界を超えた逸脱

「客観と間主観のコントロール」に未消化の感情を元にした執着的情熱が乗る場合、「限界を越える」場合があります。逸脱を予見するためのポイントは、自我肥大、層的防衛、反社会性、支配的行動、白黒思考、量的満足感、二枚舌、日和見主義です。
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